東急多摩川線下丸子駅西口(キヤノン下丸子研究所)

キヤノン下丸子研究所

西側に歩き、多摩川の土手に登ってみる。
土手の向こうには広々としたグラウンド。そして、さらにその先には多摩川がゆったりと流れている。
土手は気持ちのよい遊歩道になっていて、脇にはずっと続く桜並木。
そのような土手の上を、思い思い、ジョギングする姿、散歩する姿が見られる。
まさに親水公園だなあ。
こんな素晴らしい環境の近くに集合住宅が建っていれば、やっぱり、億ションになってしまうのだろうか。
土手の遊歩道を南へ歩く。
しばらくすると、キヤノン下丸子研究所がある。
一帯は、キヤノンの工場の敷地が広がっているのだが、その中の研究所が高層ビルになっていて、多摩川の親水公園に面して建っているのだ。
いい景色でも見れば、研究の成果が上がる、というわけかどうか、わからないけど。
竣工は、さっきのパークハウス多摩川と同じ、バブルの終わり頃。
同じ時期、三菱自動車の工場跡地に億ションキヤノンの工場ができる、というのは興味深いことだ。
億ション、というのは、なんとなくわかる。
でも、工場跡地に工場が建つ、というのは不思議ではないだろうか。
最初は、自動車工場のような油にまみれて働く工場よりも、清潔な室内で精密機器を作っている方が山の手っぽいのかな、と思っていたのだが。
おそらく、そうではなくて、利益効率の非常に高い工場になった、ということではないだろうか。
きれいな億ションができ、利益の高い工場ができたのだから、喜ばしいことなんだろうけど、その結果が今のような世の中だとすると、どうなんだろうか。
つまり、バブルが崩壊しかかっている頃に、億ションと利益効率の高い工場が出現している、というのは、その後に到来する、勝ち組、負け組の格差社会の舞台装置が整った、という感じがするのだ。
昔の川岸は、いつ洪水に襲われるかわからない、という不安があったが、その不安は、ウォーターフロントの親水公園のおかげで霧のように消えてしまった。
しかし、「不安」そのものは、格差社会という姿に変わっただけなのかもしれない。
(2008年1月記)