有楽町線新富町駅(ラ・ヴェール明石町)

ラ・ヴェール明石町

小雨の降る中、南へと歩いていく。
たしか、南西側にある、晴海通りに沿って、3棟、オフィス棟が建つ予定だ。
今のところ、その計画が豊洲における高層ビルの最終的なものだ。
まだ着工はしていず、現場は更地なのだが、近々、工事に入るだろう。
さらに南へと歩いていくと、晴海通りと南西に伸びる大通りとの交差点に辿り着く。
その交差点には、有楽町線豊洲駅がある。
有楽町線に乗って新富町駅へ。
東西に伸びる大通りを東へ向かう。
しばらく歩いていくとラ・ヴェール明石町がある。
竣工は、失われた10年が終わった後、都心集積化の時代だ。
この高層住宅が建つ前は、たしか、ものすごく古い学校の校舎が建っていたな。
その建築物は、大正時代の関東大震災後に建てられたのだが、その当時としては、最新式の施設だったのに違いない。
そういえば、この明石町には、有名な小説家の芥川龍之介の生家もあったらしい。
生家は、耕牧舎、という牧場だったのだが、酪農、というより、当時としては、珍しい、乳製品の製造販売を行っていた、ということだ。
つまり、外国人などを相手に、ミルクやバターを売っていたのだ。
今風にいえば、最新のフードビジネスなのかな。
ひょっとしたら、芥川龍之介もビジネスの一環として、小説を創作していたのかもしれない。
そのような明石町一帯も、今は、すっかり静かになってしまった。時折、老朽化した施設が再開発されるぐらいだ。
今も小雨が降り続く中、物音もしない。
かつての熱狂は、なんとかの発祥の地、という看板を残すだけ。
すべてを呑みこみながら、時代は動いていくのだな。
豊洲の再開発地も何十年も経てば、静かな場所になっているだろう。
こんな風に小雨が降る中、物音一つ、立たないような。
(2008年5月記)