西五反田(DNP五反田ビル)

DNP五反田ビル

品川駅に戻り再び山手線、五反田駅で降りる。
西口へ出て、山手線に沿って北西へ歩く。
首都高の高架の北側にDNP五反田ビル。
以前は、大日本印刷の工場だったが、いまでは大日本印刷のオフィス棟になっている。
目黒川沿いには、工場や施設が多くあったが、バブル以降、次々と高層ビルに置き換わっている。
とくにバブル崩壊以降、都心部への回帰として、その傾向が著しい。
その中で大日本印刷の工場もオフィス棟に変わったというわけだ。
また西側一帯、目黒川までは住宅棟がいくつか建ち並び、その中の1棟、ファミーユ西五反田東館は高層住宅となっている。
こうして下町的だったところが、いつしかきれいで静かなビル街になっていく。
特に五反田では、最近、大崎側から、あるいは目黒側からとビル化が進み挟み撃ちのような感じだ。
五反田という街は消えてしまうのだろうか。
たとえば、小さな店が寄り集まってラビリンスのような空間をつくっている場所が再開発で更地になってしまうと、非常に狭い空間だったことに驚かされることがある。
いわば実体のない意識の中の空間だったわけだ。
五反田は目白や大崎と違ってもともとの地名ではない。(駅近くの地元でも知られていないような場所の名前だったようだが、おそらくたんぼが多くあったのでその場所から取られた地名だろう)。つまり作られた地名といっていい。
だからこそ、人々の欲望を刺激し、妄想を肥大化させ、ありもしないごく個人的な桃源郷の居場所になりえたような気もする。
このままビル街に呑み込まれ消えてしまったとしても、夢からさめた、という感じしかないのかもしれない。
すっかりこぎれいになって、見通しよくなった街並みにあっては、猥雑なエネルギーに満ちた歓楽街にあったものは、また意識の中へと封じ込められていく。
(2006年8月記)