山手線新宿駅西口(損保ジャパン本社ビル)

損保ジャパン本社ビル

新宿野村ビルの東側には、損保ジャパン本社ビルがある。
地上に向かうに従い山裾のように広がる特徴のあるビルのデザインは、一度見たら忘れないだろう。
損保ジャパン本社ビルも高度経済長期が終わった直後ぐらいの竣工である。
実は、子供の頃、この完成したばかりのこの高層ビルの最上階で食事をした記憶がある。
どういういきさつかわからないが、家族ぐるみ、最上階の日本食レストランに招待されたのだ。
もっとも、はっきり覚えているのは、日本食だった、ということと、店内が照明を落としていて、やたらと暗かった、ということぐらいだろうか。
このような時代の最先端の場所で食事をする、ということで、家族みんな、しゃっちょこばった感じだったことが妙に懐かしい。
招いてくれた方は、なぜか、自分の家の漬物は、美味しい、と連呼し、終始、上機嫌だったなあ。
それに引き替え自分は押し黙ったままだった。今でも申し訳なく思っている。
食事が終わった後、エレベーターで地階に降り、ビルの外に出る。
そこで解散、ということになった。
招いてくれた方は、まだ、漬物は美味しい、と言っていたっけ。
ビルの外は、もう日が暮れて、真っ暗。まだ、街灯はあまりなかったのかな。
自分はまだ機嫌悪そうにして、招いてくれた方のご機嫌な様子を眺めていた。
しばらくして、別れた後、自分たち家族は、そのまま歩いて新宿駅から帰ったように思う。
それにしても、どうして機嫌が悪かったのだろうか。
なぜ、テレビに出てくる怪獣よりも何倍も巨大な高層ビルができあがっているのか。
そして、なぜ、その建造物の最上階で食事をするのか、
そのような事態を誰も説明してくれなかったからだろうか。
あるいは、そのような驚きを誰も共有してくれなかったからだろうか。
時代は、静かに高度成長期から安定期へと動き出していた。
(2007年9月記)