山手線新宿駅西口(新宿住友ビル)

新宿住友ビル

損保ジャパン本社ビルの南側を東西に伸びる北通りへ。
西へ歩いていく。
やがて、北通りの南側に新宿住友ビルが現れる。
このビルの三角柱のデザインは、とてもスマートな感じを与える。
竣工は、高度成長期の直後、ということになるのだが、新しい時代の幕開けを告げるには相応しいデザイン、ということなのだろうか。
新宿住友ビルができる以前、つまり高度成長期以前、自分は子供だったが、テレビの中では、怪物が街を破壊していた。
でも、高度成長期が終わると、その怪物よりもはるかにはるかに巨大な高層ビルが誕生し、ビル街を形成していくのだ。
街は、もはや、破壊される対象ではなくなった。
この巨大で堅牢な高層ビル群が、街や社会の安定を象徴していたのかもしれない。
さらにこの高層ビル群による人工空間は、徐々に拡大していく。
まさにSFの夢が実現していくような感じだ。未来の足音が近付いてくるのを、はっきりと実感できるようにも思えた。
でも何かが違う。これが未来なのだろうか。
そう思っているうちに、やがてバブルは崩壊し、失われた10年
その後に続く格差社会の到来。
そんな中、外国の巨大なビルに飛行機が突っ込んだニュース。
テレビでは、まったく信じられない光景が映し出されている。
そして、街や社会の安定を象徴していた巨大で堅牢な高層ビルが、グズグズと上のほうから崩れ落ちていく。
新たなテロルの始まり。
あの頃の未来は、とまどいと不安、後ろめたさと狼狽の中に掻き消えていく。
いったいどこで道を踏み間違えたのだろうか。
西新宿高層ビル街にもう一度立って、あの頃から立ち続けている高層ビルを見上げれば、その答えがわかるのだろうか。
(2007年9月記)