東西線大手町駅(AIG東京ビル)

AIG東京ビル

高田馬場駅東西線に乗り換える。
今年の冬は意外と寒い日が多い。
こんな風に地下鉄に乗り継いでしまうと、暖かくて楽なのだが。
なるべく、今回は、地下鉄で移動して、地上には出ないようにしよう。
大手町で下車。
東西線のホームから改札口を出ると、大手町の交差点に出るようだ。
だから、地上にちょっと顔を出して、また、地下に引っ込む、というのもいいかもしれないな。
そんなことを、思い描きながら、地下道を歩き、地上への階段を目指す。
すると、ただならぬ感じで、おばさん達が階段を駆け下りてきたりする。
なんだろうと訝しがりながら、階段を登っていくと、地上は、凄まじい、暴風が吹き荒れていた。
ちょっと前に春一番の南風だったらしいのだが、この時は、吹き返しの強い北風。
南北に伸びる日比谷通りの南側を見ると、もはや、砂嵐状態で視界がきかない。
日比谷通りの西側、パレスホテルの手前にAIG東京ビルがあるのだが。
間近に建っているはずのこのAIG東京ビルも、舞い上がる土煙の中に隠れてしまいそうに見える。
北側には、かつて、JFEビル、という同じぐらいの高さの高層ビルが並ぶように建っていたのだが、今は、再開発、ということで、なくなり、その場所は更地になっている。
そういうわけで、砂嵐の真っ只中のAIG東京ビルは、なんだか、砂漠にある、大昔の遺跡に見えてしまった。
ビルの外壁の色も土色っぽいし。
まるで、砂の上に、突き出した、塔のような建物の遺跡だ。
砂嵐のたびに砂粒が外壁に容赦なく当たるが、いまだにポツンと一棟だけ建ち続けている、そういう感じだ。
もっとも、西側のパレスホテルも再開発で建て替えられるらしいので、もし、そうなれば、本当にこの一画にポツンと一棟だけ残ることになる。
高度成長期が終わって、安定期の頃に竣工してこの一画にビル群を形成していたのに。
都心集積化の嵐で一棟しか残らなくなるのだ。
なにか、この冬の砂嵐の中に建つAIG東京ビルは、そのことを象徴しているように見えてしまう。
(2008年2月記)