銀座線京橋駅(第一生命相互館)

第一生命相互館

地下道には、自分と同じように、地上の嵐を避けるために降りてきた、買い物客などが、心配そうな感じで、うろうろしている。
本当は、東西線で隣の日本橋駅に行って、銀座線に乗り換えたかったのだが。
肝心の東西線がストップしていては、どうしようもない。
早くも計画が頓挫してしまったな。どうしようか。
他に動いている地下鉄路線で大回りしてでも行こうかと思ったけど、どのくらい時間がかかるかわからないのでやめた。
代わりに地下道で、ぎりぎりまで日本橋駅に近いところに行く作戦。
なるべく強風が吹き荒れる地上での移動距離を短くしようと思ったのだ。
地下道を延々と東に進む。
行き止まりになったところで地上に出ると、外堀通りとの交差点だった。
強風のためによたつきながら交差点を渡りきると、もう日本橋駅の入口があった。
こんなに近いなら、地下道をつなげてしまえばいいのに、と思ったが。
つながっていれば、このまま、地上に出ないでも、日本橋駅へ行けたのだ。
でも、強い寒風が吹きすさぶ、ビルの合間から見えた空は、きらきらとしていて、随分と明るかったなあ。
陽射しは、もう春なのかもしれない。地上に出たからこそ、春の陽射しを感じれたのかな。
日本橋駅で銀座線に乗る。
京橋駅で降りる。
東西に伸びる鍛冶橋通りと南北に伸びる中央通りとの交差点がある。
地上に出ると、相変わらず、猛烈な北風が吹きまくっている。
その交差点の南東側に第一生命相互館がある。
高度成長期の終わり頃に竣工しているのだが。
このビルが建った時代が、一番、将来に希望を持てた雰囲気が満ちていたかもしれないなあ。
そういうことが理由、というわけでもないのだが。
なぜか、このとてもレトロな高層ビルが、吹きすさぶ北風の中、やけに明るく輝いて見えたのだ。
陽射しがもう冬の弱々しい光ではなく、力強い春の太陽の光だからだろうけど。
春はもうすぐ。そういう時代に建った建物だ。
(2008年2月記)