山手線渋谷駅西口(南平台町計画)

南平台町計画

道玄坂のきつい坂を上っていく。
北側は、ラブホテルが密集している地帯。いったん、入り込むと、迷路のようになっていて、なかなか、通過できなくなってしまう。
ただ、ちょっと、東側の道玄坂小路を北に行くと、すんなりと、東急文化村の方に出られるのだ。
東急文化村、というとデパートなのだが、バブルの頃の渋谷デパート戦争の夢の跡、なんだろうな。
一回ぐらいしか行っていないし、覚えてもいないが。
その東急文化村まで、渋谷駅から大通りが伸びていて、その大通りの東側に、沿うように、渋谷センター街がある。
渋谷センター街をずっと歩いていくと、たしか、タワーレコードがあったなあ。
その頃は、CDではなく、本当にレコードだったっけ。
今は、山手線沿いに移転してしまった。
あと、なぜか鯨料理の店や台湾料理の店、そして、とても妙な形の交番があったな。
もう行っていないので、どうなってるんだろうか。たぶん、今も、変わらないのだろうし、その頃のように、賑やかなんだろうけど。
そして、昔は、その賑やかさに、身を沈め、埋もれていれば、時が、どんどん、経っていくものと、思っていたものだ。
まさに、何も生産的なことを、しなくても、暮らしていけるんじゃないか、という錯覚に浸っていたわけだが。
もっとも、その賑やかさ、というのは、所詮、バブルの頃のデパート戦争から溢れ、零れ落ちた、あぶく銭、が元なのかもしれない。
実際、そうだったかもしれなかったけど、でも、今から振り返ると、懐かしくてたまらない、というのも、事実なのだ。
そんな、昔のことを思い出し、感慨に耽りながら、道玄坂を歩いていく。
ラブホテル街が尽きると、今度は、下り坂。
246号線に出る。そのまま、246号線に入って、西に歩いていく。
しばらくすると、南北に伸びる旧山手通りとの交差点。
その交差点の南東側に南平台町計画の工事現場がある。
道玄坂の、こんな近くに、このような、巨大なオフィスビルが建つものらしい。
たぶん、この高層ビルが完成して、その巨大な姿を見上げると、何も生産的なことを、しなくても、暮らしていけるんじゃないか、という昔の甘い錯覚は、雲散霧消してしまうに違いない。
その後に残るのは、重苦しくて、冷ややかな現実だけだろうか。
(2008年8月記)