都営三田線志村三丁目駅(板橋サンシティG棟)

板橋サンシティG棟

実は、板橋サンシティを訪れるのは、二度目になる。
それに、さっき、歩いてきた、環状8号線から、さらに、西へ、高島平団地を抜けていくコースは、昔、クルマで何度も通ってきた。
その時、感じたのは、多摩ニュータウン、とは、ちょっと違うけど、とてもニュータウン的だな、ということだ。
なんとなく、未来的な雰囲気だったなあ。
もっとも、ニュータウンだと思っていたのに、いつの間にか、古くなってしまった、というのは、多摩ニュータウンと同じだけど。
板橋サンシティについてなのだが、他の集合住宅と比べて、板橋サンシティが、際立っているのは、その緑の異様な多さだ。まるで、植物園の中に、高層住宅が点在しているような感じがする。
居住者は、この緑の多い環境、気に入っているのかどうかわからないけど。
でも、自分としては、まさに、理想の居住空間、という風に見える。
さらに言えば、なぜ、このような居住空間が、あちこちに、広まらなかったのか、不思議だ、とさえ思っているぐらいなんだが。
そして、間違いないのは、この森の中の集合住宅群こそ、高度成長期の夢の、ある一つの到達点、ということだ。
ただ、惜しむらくは、この板橋サンシティ、公団の団地や地方自治体運営の集合住宅などではなく、民間の運営らしい。
ということは、人工の山の手、という側面も持っているのかな。
もしそうなら、興醒めしてしまうが。
だけど、この集合住宅が登場した当時は、高度成長を達成した安定期。この森の中の集合住宅だけではなく、まわりは、未来的な雰囲気に満ちていた、ニュータウンだったはずなんだが。
そんなことを考えながら、森の中の道を北へ歩いていくと、板橋サンシティの中の、もう一棟の高層住宅、板橋サンシティG棟がある。
見上げると、森の青々とした緑の果てに、高層住宅が聳えているのだが、本当に、環境がよさそうに思える。
ただ、こうして見ていると、やっぱり、未来の夢を維持していくのは、人工の山の手でなければ、無理なのかもしれないな、という、諦めの気持ちになってしまった。
まわりのニュータウン、つまり、高度成長期の夢や希望は、この森の中の集合住宅のようにはなれず、中途で立ち尽くし、そのまま、古びて、レトロになってしまったのかな。
だから、そのレトロな中に、辿り着けなかった、夢や希望への思いが、詰まっていて、それが、見る者の気持ちを、強く揺さぶるのかな。
(2008年8月記)