中央本線甲府駅南口(紅梅地区再開発工事現場)

紅梅地区再開発工事現場

甲州街道を、東へ東へと、歩いていく。
それにしても、クルマが多いな。
地方都市は、たいてい、クルマ社会なのだ。
このようなクルマ社会にあっては、移動手段は、クルマだけ。
だから、クルマがないと、歩くしかなくなってしまう。バスは、まったく、当てにできないし。
そういうわけで、急いで歩いていく。やがて、昭和通りとの交差点。昭和通りに入り、北へと、向かう。
この通りは、甲府駅に続いているのだ。
通り沿いには、都心郊外にあるような、しゃれたお店が目に付く。
でも、そのような街並みを見て、安易に、どこの場所も同じだ、と決め付けることには、躊躇してしまう。実際、そうなんだろうけど。
なぜなら、自分は、甲府の街に初めて来たわけだし、それ以前に、土地勘もなければ、感慨もまるでないのだ。
甲府の街に唯一、触れたのは、実に、子供の頃の教科書に載っていた、太宰治新樹の言葉」という小説、これだけ。
だから、ひょっとしたら、いつも見慣れた、都心郊外の景色を、知らず知らず、異郷の地の中に、探しているだけなのかもしれない。
試しに、甲府の街についての、唯一つの手掛かり、「新樹の言葉」から、引いてみる。
「シルクハットを倒さまにして、その帽子の底に、小さい小さい旗を立てた、それが甲府だと思えば、間違いない。きれいに文化の、しみとおっているまちである。」
この一節を前にすると、こぎれいなお店を見つけて、都心郊外と同じだ、という感想が、いかにも、みすぼらしくなってしまうな。
昭和通りをさらに北に進み、川を越えて、しばらく歩くと、美術館通り。
美術館通りに入って、いったん、東に進み、甲府のメインストリート、平和通りとの交差点を、北に曲がり、平和通りを北へ。
どんどん歩いていくと、東側には、重厚な役所関係の建物が並ぶようになる。
山梨県の中心部、ということを感じさせる。
その中の一つ、甲府市役所の北側を東に伸びる、紅梅通りに入り、東へ。
役所関係の建物の東側は、商業地になっているようだ。
少し歩くと、そんな中、紅梅通りの北側に、紅梅地区再開発の工事現場がある。
なんでも、バブルの頃に、鳴物入りで登場した、ショッピングセンターの成れの果てを、再開発する、ということだ。
地方都市の、バブルの熱狂は、より激しかったらしい。そして、今は、都心集積化、ということで、衰退しきってしまっている。
そんな場所には、高層ビルが建つ、というわけか。
どうも、「奇麗に文化の染み透った街である」、という風には、書けないなあ。
(2008年10月記)