山梨県昭和町(アピオ甲府タワー館)

アピオ甲府タワー館

西武新宿線で新宿へ。
駅を出て、青梅街道へ。西に進んで、JR新宿駅の西口。
賑やかな駅前広場を南へ南へと歩いていく。
駅前広場の南側まで行くと、高速バスターミナルがある。
繁華な駅周辺にあって、ここだけは、一種独特の雰囲気があるな。
この場所が、遙か彼方、異郷の地への、窓口になっているためだろう。
つまり、今、立っている、この新宿の街から、まったく別の世界に降り立つ、そんな旅路まで、あと、少し。そんな、夢見る高揚感が、この場所には、満ちているのだ。
ちょっと、大袈裟かな。
切符売場の地下に降りてみる。地下は、質素な感じの待合室になっていた。
駅なんかも、そうだけど、こういった待合室は、たいてい、質素さな感じだ。
たぶん、もうすぐ、ここからは、いなくなるわけで、だから、なにがしかの、執着、未練、といったものから、無縁だからだろう。
バスが来るまで、ここで、ぼんやりしていようかな。
時間になったので、地上に出て、高速バスに乗り込む。行き先は、甲府方面。
バスは、首都高に乗り入れ、高架の上を、ひたすら、西へ進む。見慣れた、郊外の街が、後へ後へと過ぎ去っていくのを、眺めていたら、いつしか、眠りに落ちてしまった。
目覚めると、バスは、中央自動車道、山々の中を、疾走していた。
幾重にも、重なり、連なる、山々。そして、その起伏を覆っている、木々。
車窓の、そんな景観を眺めていたら、ふと、「毛」と「木」は、同じ語源だ、という話を思い出す。
すなわち、「木」は、大地に生えている、「毛」なのだ、という話。
例えば、栃木県、群馬県は、その昔、「毛の国」、と呼ばれていたのだが、それは、木々が生い茂っていた国、ということが、語源らしい。
「木」と「毛」が同じ、というのは、まるで、実感が沸かなかったのだけど、今、見ている、山肌を覆いつくしている、木々を見ていると、なるほど、と思ってしまったな。
バスは、やがて、そんな山間を抜け、広々とした、場所に出る。甲府盆地だ。
平野と見紛うほどに広い、その盆地の中を、バスは進み、途中、中央道昭和バス停で下車。
高速道路を階段で降りていくと、普通の公園の前に出てしまった。さて、どうしたものか。
盆地、というのは、たしかに、山間部にあっては、平たい地形なのだが、やはり、平野とは違い、なだらかだが、起伏があるものらしく、見通しが、よくないのだ。
とりあえず、中央自動車道の下をくぐって、東側に出るが、まったく、わからなくなってしまっている。
高層ビルを目指しているので、だいたい、目当ての高層ビルは、遠くからでも見えるものだが、その常識は、ここでは、通用しなかったのだ。
あてどもなく、地方の街を歩いていくと、国母駅への表示板。まるで、違う方向に向かっていることに気付き、さすがに、焦ってしまう。
とにかく、北に向かい、甲州街道を目指すことにする。
幅広な交通量の多い、甲州街道に出て、今度は、ひたすら西に進む。
かなり歩くと、中央自動車道との甲府昭和インターチェンジがあるが、その東側、甲州街道の北側に、アピオ甲府タワー館がある。
バブルが崩壊した頃に建っている。
山の中の秘密基地みたいな場所にあるのかと、思ったら、意外と開けたところ、地方都市の郊外にあったのか。
時期的に、あるいは、場所的に見て、バブルの遺産なのかな。
さっき、道に迷ってしまったので、日没まで、もう時間がない。
先を急がなければ。
(2008年10月記)