埼京線十条駅(帝京大学医学部付属病院前の石神井川)

帝京大学医学部付属病院前の石神井川

帝京大学医学部付属病院の南側には、石神井川が流れている。
両岸は、コンクリートで固められ、まるで、大きな、側溝のようになっていて、もはや、一般的な、河川、という感じはしない。
河原もないし、川辺に降り立つこともできそうにないな。
ただ、川に沿って、延々と、桜並木が続いている。春になると、とても美しい景観を見せてくれることだろう。
そのように桜並木のある、石神井川なのだが、西から東へと流れてきて、ちょうど、写真に写っているあたりで、向きを、東南方向へと変えている。
その部分から、下流域の方は、くねくねと流れが蛇行しているので、かつては、低湿地が広がっていたのかもしれない。
そんな盆地みたいな場所に、帝京大学医学部付属病院、その他の施設群があるのだ。
このような地形だとすると、たぶん、陸軍の施設があった頃は、山間の秘密要塞みたいに見えたことだろうし、大名の下屋敷が広がっていた頃は、風雅な隠れ里、庭園みたいに見えたに違いない。
この湾曲している位置から、川を、西へと遡っていくと、旧中山道が通っている。その旧中山道のためにかかっている橋が、「板橋」、という名前の橋なのだ。
この「板橋」こそが、板橋、という地名の、謂れ、なのだろう。
こうして見ると、石神井川は、コンクリートで固められた側溝みたいな川になってしまっているが、板橋、という地域の中で、とても、重要な位置を占めているように思える。
ひょっとしたら、川沿いの、桜並木も、地域にとっては、ただの桜並木、ではないのかもしれないな。
その桜も、あと、数ヶ月経ったら、満開になる。石神井川は、その満開になった桜の花で、覆われるだろう。
春の到来を、石神井川沿いの桜並木を歩くことで、実感するとしたら、この地域の、石神井川への思いを、感じることができるかな。
それは、ともかく、目の前の桜も、春のような陽光を浴びて、目覚めつつあるように、見える。
春まで、あと少し。
(2009年2月記)