山手線新橋駅(なくなりつつある日比谷神社)

なくりつつある日比谷神社

第一京浜を渡り、環状2号線の建設予定地に沿って、歩いてみることにする。
第一京浜から見ると、ずいぶん、派手に、工事をやっているのだが、西側、街中に、入ってしまうと、静かなものだ。
ただ、既存の建物の、撤去作業は、急ピッチで、工事の近いことを、思わせる。
今しも、ポツンと、一軒だけ残る、古い飲食店の建物が、風前の灯。
たぶん、次、訪れたときは、もう、なくなっているだろうな。
そのお店、郷土料理屋、とあるから、地方から、上京してきた、サラリーマンが、地元懐かしさで、やってきていたのかもしれない。
たぶん、こんな感じかな。
上京してきて、早、幾十年。今や、すっかり、東京の中に、日常が、組み込まれ、慌しい日々。
故郷のことなど、すっかり、忘れ、帰るという実感も、いつしか、なくなってしまう。たまさかの帰郷も、旅行気分。
だが、ふと、ビルの谷間、アスファルトの上、群衆の中に、己の姿を見出し、アイデンティティを見失ってしまうこともある。
そんな時、故郷こそが、失われたアイデンティティを回復させてくれるのだ。
という具合だろうか。
そして、そんな郷土料理屋には、夜毎、常連さんが、集っていたのだろう。
だが、もうじき、なくなってしまうわけか。
もっとも、別な場所に、移転するだけなんだろうけど。
そんな感傷に浸りながら、さらに、西へ歩くと、更地に中に、日比谷神社。
第一京浜沿いに、新しく、建てているので、こちらの方も、もうすぐ、取壊されてしまうことだろう。
神社は、地元住民にとっては、郷土料理屋のような存在かもしれない。
こちらも、同じく、別な場所に、移転するだけなんだろうが。
でも、なぜだか、痛々しい感じがするのは、なぜなんだろう。
(2009年6月記)