銀座線虎ノ門駅(環状2号線再開発予定地)

環状2号線再開発予定地

桜川とは、風流な名前の川だが、実際、桜木と関係があったのか、わからない。
たしかに、江戸名所図会には、その昔、桜川の畔に、桜が植わっていた、というようなことが、載っている。
ただ、江戸名所図会には、近くの、藪小路の竹薮の絵図はあっても、桜川の、桜の絵図はない。
だから、江戸時代、桜川の畔に、桜が植わっていたわけではないのだろう。当時も、なぜ、桜川、というのか、ちょっと、考えあぐねたのかな。
それはそうとして、一帯に、田畑が広がり、こんもりとした森をいただく、愛宕山がある、という景観は、目を奪うほど、美しいものではあったはずだ。
そんな、かつて、桜川が流れていた、愛宕通りを離れ、さらに西へ。
すぐに、大袈裟な言い方をすれば、ゴーストタウンのような一画が、現れた。
ここら辺で、まっすぐ、西へ伸びきた、環状2号線は、向きを、北西に変えるのだが、その角の部分で、大規模な、再開発が予定されている。そういうことで、更地と、ゴーストタウンがあるのだが。
ちょっと前までは、低層のオフィスビルが、幾棟か建っていたのだろうが、この、ゴーストタウンの様を見ると、少しは、街並みは、あったのかも、と思ってしまう。
今となっては、もう、わからない。
わかっているのは、はるか昔、あたりには、風光明媚な、景色が、広がっていたこと。そして、数年後には、見上げるような、巨大な、高層ビルが、聳え建っている、ということだな。
時代は、動いていく。
この場所にとって、今は、その、ちょっとした、狭間のかもしれない。
誰もいなくなって、しんと静まり返った建物を前にしていると、そう思えてくる。
(2009年6月記)