市川市菅野(菅野の松林)

市川市菅野(菅野の松林)

さらに、南へと、歩いていくと、松林が広がっている。
総武線に乗って、千葉方面に向かっているとき、江戸川を渡って、市川に入ると、まず、目に入るのが、北側に、東西に連なる、松だが、その松こそ、今、目の前にある、松の木なのだ。
列車の車窓から見ると、並木のように見えるが、松林といっても、実際は、けっこう、疎らに、植わっているみたい。
この松の木、種類は、クロマツで、海岸に分布している方のマツである。ちなみに、内陸のマツは、アカマツだ。
ということは、かつて、真間川のすぐ、南側は、海岸だった、ということになる。
実際、江戸名所図会には、このあたりを、真間の浦、真間の浜、真間の入江、と記している。
おそらく、その海岸に、クロマツを、たくさん植え、防風林にした上で、内陸の湿地帯を開墾したに違いない。
ただ、現在、海岸線は、はるかに、南側に、移動してしまっている。
海岸は、埋め立てて、移動しても、クロマツの方は、移動するということには、ならなかったのだろう。
だから、本来、海岸に植わっているはずの、クロマツが、多く、内陸に取り残されて、今に至っているのだ。
そして、取り残された、松林が、住宅街になっている。
総武線から見える、松林が、なぜ、目を引くのか、というと、このような、不思議な組み合わせからなる、光景によるのかもしれない。
海岸でもないのに、クロマツの林があって、しかも、そこは、住宅地になっているわけだ。
一種の奇観、といってしまうと、言い過ぎかな。
住宅地に、海辺の景観が、プラスアルファで、くっ付いてきた、という感じだろう。
そんな、松林を、南へと進んでいく。
(2009年8月記)