東武伊勢崎線東向島駅(東向島 蓮花寺)

東向島 蓮花寺

都市への興味が、なくなっても、こうして、歩き回っているのは、そこに、高層ビルが、建つからなのかもしれない。
そんな、高層ビルが建つ場所は、たいてい、下町か、住環境のよくない所、あるいは、曰くのある土地、ということになっている。
いわば、都市の中の、陽の当たらない、陰の部分だ。高層ビルが建てば、本当に、日影になるけど。
そして、そういう場所は、なによりも、敷居が、低いのが、魅力的なのだ。
だから、高層ビル巡りを、いまだに、続けているのだろうな。
それに対して、たぶん、都市そのものを、隈なく、楽しむとすれば、それこそ、一生、働かなくても、生活していける、永井荷風のような立場でなければ、無理だ。
バブルの頃は、それが、世の中で、あまねく、可能になった、気がしたに違いない。
だから、永井荷風ものや、帝都物語が、流行したのだろう。
そんな、古きよき、昔に、思いを馳せながら、さらに、北東へ。
地蔵坂通りに出たところで、東に伸びる、細い道に入る。
そのまま、東に歩いていくと、道路の北側には、蓮花寺。
鎌倉時代の創建だ。
一帯は、ちょっと前まで、寺島、という地名だったそうだが、その寺は、蓮花寺のことらしい。
時期的に見て、たぶん、そうだろうと思う。
かくのごとく、都心部、あるいは、関東平野全体に、鎌倉時代創建、というのが、多いのは、関東平野の開拓、開墾が、その時代、飛躍的に進んだからだろう。
このあたりも、そうして、拓かれた土地に、違いない。
そうした土地を、懸命に、守ることが、いわゆる、「一所懸命」の語源なのかな。
昔は、今、いる場所すら、ままならなかったのだ。
でも、現代には、通じるものがある。
少なくとも、永井荷風なんかよりも、ずっと、実感が持てるな。
そのような場所に出会えるから、高層ビル巡りは、まだまだ、続くわけだ。
(2009年9月記)