京浜急行六郷土手駅(北野神社 止め天神)

北野神社 止め天神

宮本台緑地から、南へ。
すぐに、北野神社がある。
別名、止め天神。
ネーミングが、とても、興味深いのだが。
謂れについては、江戸時代、将軍が乗った馬が、暴走し、この神社に祈念したところ、将軍が助かった、ということによるらしい。
史実かどうかは、わからないが。
とにかく、何かを、「止める」ことに、御利益があるのだろう。
ただ、今、見ると、多摩川の土手の下にあり、場末のように、思える。
このあたり、京浜急行の東側、海岸に至るまでは、昭和の取り残された街並みが広がり、なおさら、そう感じてしまうのだ。
かつて、一度、そんな場所、羽田の方まで、行ってみたことがある。
まるで、つげ義春の作品に出てきそうな、風景だな、なんて思ったな。
古びた家並み、懐かしい商店街、時間の止まったような光景。
時代に取り残された、街を、彷徨い歩き、さて、帰ろうかと、京浜急行の駅に向かったのだ。
その時、ふと、多摩川の土手下に、目立たない、控え目な神社が、目に留まる。
それが、今、目の前の北野神社。
別名は、止め天神。
場末の行き止まり、なのかな、なんて、ぎくり、としたものだ。
橋がなければ、ここまで来て、渡船を利用できないとしたら、たしかに、この場所、行き止まり、ではある。
それ以上に、彷徨い歩いてきた、時代に取り残された街は、行き止まり、なのかもしれない。
なぜなら、橋がなくて、行き止まりなら、橋を架ければ、いいわけだし。
そうでなければ、行き止まり、のまま。あとは、消えるかどうか、というだけ。
あたりの、レトロな街が、とても、儚いものに思えてしまった。
(2009年9月記)