都営大江戸線西新宿五丁目駅(神田川と神田上水助水堀の合流地点跡)

神田川と神田上水助水堀の合流地点跡

細い路地に、分け入っていくと、その先、突然、開けた場所。
神田川沿いに出る。
かつては、この場所で、神田上水助水堀の水流は、神田川に、流れ込んでいたのだ。
今は、まったく、そのような、面影はない。
ただ、水流そのものは、今でも、まだ、地下を、流れている。
だから、神田川の土手を見れば、ひょっとして、水が、流れ落ちる、様子を、見ることができるかもしれない。
でも、それでは、川ではなく、地下の、下水管と、変わらない、そんな気がするけど。
そういえば、その昔、江戸時代、神田上水助水堀には、滝があったらしい。
熊野神社のところだが。十二社の滝、あるいは、熊野滝、などと呼ばれていた。
さらに、その西側は、十二社の池もあったのだ。
周囲には、鬱蒼とした木立。
その、風光明媚な景観は、多くの、見物客を、引き寄せたに違いない。
果たして、一帯は、賑やかな、行楽地となり、その名残りが、十二社の歓楽街だ。
そんな昔は、今となっては、夢のよう。
目の前には、荒涼とした、コンクリートだらけの大地が残っているばかりだし。
もっとも、そんな場所も、もう少し、時間が経てば、再開発され、整備された、きれいな、公園になるかもしれないな。
そのとき、今を、振り返ってみれば、荒れ果てた、場所だったと、昔語り。
そして、その後は、どうなるのだろう。
徐々に、古びていき、レトロになっていくに違いない。
そして、その後は。
もう、考えても、仕方がない。
帰らなければならないので、とりあえず、北へ歩き、青梅街道へ出る。
新宿方面を見ると、こちらの景観も、開けていて、変貌、著しい。
ふと、同じ場所からの、50年前の写真を思い出してしまった。
セピア色の古ぼけた、光景。青梅街道には、トラック、一台。主婦が、こちらに、向かって歩いてくる。
50年後から見れば、自分も、この、セピア色の中に、いるのだ。
そう思うと、気分が、なぜか、落着いてきた。
(2010年1月記)