山手線代々木駅(傷だらけの天使 エンジェルビル)

傷だらけの天使 エンジェルビル

さらに、代々木の街中を、南へと歩いていく。
ふと思い出したが、代々木、といえば、代々木ゼミナール、だな。
遠い記憶によると、一度、行ったことがあった、と思う。
予備校なので、たぶん、学生の頃に違いない。
資料か何かを、貰いに、行ったのだろう。
当時、学生のこととて、肩身の狭い身分。
そんな、自分にとって、雑然としていて、物価も安そうな、代々木の街、ずいぶん、ほっと、させられたものだ。
だからといって、予備校が、すべて、下町に、あるわけでもないんだろうけど。
学生時代の思い出に、浸っていると、もう、代々木駅の改札も近付いてきた。
と、そのとき、東側を、見ると、テレビドラマ、「傷だらけの天使」に出てきた、エンジェルビル。
本当の名前は、代々木会館ビルというのだが。
傷だらけの天使、といえば、高度成長が、達成されようとする、間際のテレビドラマ。
ただ、実際、見ていたのは、再放送。もはや、高度成長が、昔語りとなった、安定期の頃だ。
この、ドラマの結末、ずいぶんと、悲劇的なのに、何度も何度も、見ていたのは、たぶん、傷だらけの天使、の悲劇は、過去のもの、すでに、十分に、豊かになった、安定期の、現状を、かえって、再認識させてくれる、という、感覚が、あったのかもしれない。
ところで、ドラマの設定では、たしか、エンジェルビルは、再開発で、なくなっている、ということだったと思う。
でも、なくなったはずのエンジェルビル、痛々しいままの姿で、今でも、こうして、残っているのだ。
こうして見ると、豊かだった、安定期が、もはや、なくなってしまった現代、結局、「傷だらけの天使」の悲劇的な結末だけが、残った、ということを、感じてしまうな。
(2010年4月記)